先日の下野新聞に公営墓地における無縁墓地問題について取り上げられていました。
墓石が建っているものの墓じまいの手続きがないまま継承者が途絶えてしまった墓地、いわゆる「空き家」
ならぬ「空き墓石」の対応に各自治体頭を悩ませている実態があります。
まず「このお墓はもう管理者がいないのか?」ということを確認することに労力を要し、それからお墓に直
接立札等を立てて「このお墓もう誰も使ってませんね?」と1年をかけて周知し、それからようやく墓石の
撤去などの作業に取り掛かれるわけなのですが、無縁となった遺骨をどう扱うかのマニュアルや整備状況の
内部規定がある自治体は全国的に見ても1割に留まっているのが現状です。
この「後々後継者がいなくなる問題」の対応策としては、栃木県では今のところ合葬式墓地の整備が推進さ
れているようです。
最近で言いますと、宇都宮市営東の杜公園や真岡市長田霊園に合葬墓が新たに整備されました。
鹿沼市営見笹霊園でも今年中に合葬墓が整備されるようです。
お墓を建てても後継者がいないとあらかじめ分かっているのなら、その後の管理が一切いらない合葬墓への
埋葬を選択するのが、ご本人にとっても自治体にとってものちのちの負担がないということでしょう。
それにしてもなんでもかんでも合葬墓で処理しておけばいいだろうという考えのはいささか乱暴ではないか
と思います。
以前お客様からある公営墓地にお墓を建立したいというご相談を受け、その自治体に一般墓の空き状況を確
認するために電話したところ、「多少の空きはあるが合葬墓を検討してはどうか?」と回答されました。
お墓建てたいって言ってんのに合葬墓勧めるって、筋違いもいいとこだと若干怒りを覚えました。
確かに自治体としては、墓地の不足回避や今後後継者がいなくなったとしても面倒なことにならないといっ
たメリットがあるのかもしれないですが、やはりちゃんと自分たち個人のお墓で眠らせてあげたいという思
いを持つ方のお気持ちは尊重して差し上げるべきではないでしょうか。
神戸市では「子や孫に継承を前提としない墓地への需要の高まり」を考慮し、墓石の撤去や合葬墓への改葬
を組み込んだ15年期限付きの墓地を整備したそうです。
お墓の継承者の心配なしに墓石を建立できるようにしたのはなかなかに斬新な取り組みだと感心いたしまし
た。
このような需要への対応は民間の霊園でも後手に回っているところ、自治体が率先して新しい道を切り開い
てくださるのは石屋としても大変心強いです。
栃木県も安易に合葬墓一辺倒の対策に陥らず、多様な選択肢が取れる工夫をしていただけるよう期待してお
ります。